「温故知新」川上誌

平成18年秋、我が家で2~3人の婆さんが話し合っている。

「この屋号は提灯でみたことがある」「この家は米屋をやっていて、米を計る升を入れたんやろな。」「男らしい漁士のしるしやな。」などなど。

屋号を上段に下の欄に寸評らしいものが書いてある。私はその寸評らしいものが気になった。

このやりとりがきっかけになって、それぞれの家の職や人物や盛衰の歴史を探ったら、郷土史の一端をしるすことができる。

これは面白い!と独り合点し、独走を始めた。

何の資料もないので、まず家庭訪問から始めた。

前触れもなく突然お邪魔し、まず

「最初の先祖はいつ頃の人かな?」

と話しかけ、家人が知っていることをいろいろとしゃべってくれる。

口伝、伝聞を脈絡なく追懐し語ってくれる当主や、中には繰り出し位牌を拝見しながら、

「もっと時間をかければ何代、何百年と正確にわかるな!」

と思案しながらも、お休みのところを申し訳ないと思い

「もったいない、罰が当たる。」

と早々にして帰るようにした。

従って家系を探ると言っても、全くの中途半端で聞き漏らしの事例も多かった。

私は人事録や興信録をつくるつもりはない。

その家の家風や先祖の特色である人物像を映し出し、その人柄が感得できればと話をすすめた。

合理的、実証的ではないが先祖の思い出を聞きながら昔の世の中をいろいろと追想した。大げさながら次の金言を思い出した。

「温故知新」古きを尋ね新しきを知る。

(古い物事を研究して、新しい見解を探ること)